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「いえ、ただ、誤解を解かないといけませんね。お嬢様が私となんて。有り得ませんからね」
「・・・・・・有り得ませんの?」
「え?」
つい反射的に聞き返えしてしまい、アルが目を見開く。
それを見て我に返った私は、慌てて両手を左右に振った。
「い、いえ。なんでもありませんわ。皆にはわたくしから話しておきますから、ご安心下さいませ。それでは」
「あっ、お嬢様」
早口でべらべらーっとまくしたて、足早にその場を去る。
さすがに今の状況で告白する勇気はないよ。
・・・・・・はああ。
有り得ません、かあ。
その後、きっちり皆を集めて調教・・・・・・げふんごふん。お説教して、あからさまな応援は禁止した。
両親にも、見守るだけにして欲しい、と訴えておく。
さっきはちょっと落ち込んだけど、ようやく出会えた理想の人だからね。
これくらいじゃ諦めませんよ!
「アリシア・・・・・・まだ食べるのかい?」
まず、少しでもアルに可愛いと思ってもらえるように、小太りになることにした。
いつもの三倍の量の朝食を必死で口に入れていると、父に心配された。
「食べますわ。少しでも太りたいんです」
「でもアリシア。あなたはわたくしに似て、いくら食べても太らない体質なのよ?」
と、ほっそりスレンダーボディの母が、憂い顔で私を見る。
「わかっていますわ。でも、女にはやらなきゃいけない時があるのです」
そう。無理でもなんでもやるのだ。
アルを振り向かせるために。
リスのように頬をぱんぱんにして頑張る私を、両親や使用人達が心配そうに見ていた。
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