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私は両親に叱られ、使用人達から心配されて、深く反省した。
人間、体が資本だもの。まず健康ありき、だよね。
ただ、気になるのはアルのこと。
倒れた私を部屋に運んだのはアルだと聞いている。
手間をかけさせてしまったし、謝りたい。
私はこっそり部屋を抜け出すと、アルを探した。そして中庭に出る通路で見つけたのだけど。
「・・・・・・まだお散歩ですか? お嬢様」
冷え冷えとした声音、冷たい眼差し。
厳しい表情で腕を組んで立つアルは、非常にお怒りであった。
「い、いいえ。その・・・・・・アルに、謝りたくて」
「・・・・・・私に?」
「ええ。その、部屋に運んでもらってありがとう。目の前で倒れてしまってごめんなさい」
「・・・・・・それだけですか?」
「え?」
アルは金髪を掻き上げると大きく溜め息を吐いた。
「すごく驚きましたよ。もっと早くに、無理やりにでも部屋に戻していれば、と後悔しました」
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「いえ、私に謝罪は不要です。護衛なのに、注意不足でした。私の方こそ謝らなくてはなりません」
「そんな、アルは悪くないわ。わたくしが、日傘もささないでいたから・・・・・・」
「わかっておいでなら、次からは止めて下さいね」
「・・・・・・はい」
きっちり釘を刺され、私の日焼け作戦はボツになった。こうなったら、もうひとつの「太って目も細くなりました」作戦を是非とも成功させなくては・・・・・・。
私が密かに決意していると、アルは瞳を翳らせて呟くように言った。
「・・・・・・いったいどうして日焼けをしようとしたんですか?」
「えっ、ど、どうしてそれを」
「わかりますよ。年頃の娘はよくやってますから」
「そ、そう・・・・・・」
どうやら、日焼けはこの世界ではポピュラーな美容方法らしい。
まあ、そりゃそうか。一番お手軽だしね。
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