36人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、質問には答えられない。だって、あなたに振り向いてもらいたくて、なんて。
・・・・・・怖くて言えないよ。
アルのことが好きになるほど、怖くなる。
「・・・・・・好きな方でも出来たんですか」
心臓が大きく跳ねた。
見上げると、アルが真剣な表情で私を見ている。
・・・・・・これは、チャンスなのだろうか。
前世でもろくに恋愛経験がない私には難易度が高すぎるけど。
女は度胸。
よし、言うぞ・・・・・・!
「あの、実は」
「・・・・・・応援しますよ」
「・・・・・・え?」
アルは優しく微笑むと一歩後ろに下がった。
思わず手を上げて引き止めかけたけど、アルは私の手を避けるように身体を引く。
「お嬢様はお優しい方ですからね。どなたがお相手でもきっとうまくいきますよ。いかなかったら、単に相手に見る目がなかっただけです。もっとご自分に自信を持って下さい」
「アル、あの」
「聞きましたよ。食事も無理にとろうとしたらしいですね。そんな事をしないと振り向かない相手なんて、お嬢様には相応しくないのでは?」
「えっ・・・・・・」
「お嬢様には、お嬢様の良さがありますから。わかってくれる方を探したら如何でしょ・・・・・・お嬢様?」
アルが驚いた顔で息を呑む。
私は、泣いていた。
胸が詰まって苦しくて、涙が止まらない。
「・・・・・・お嬢様」
私は両手で顔を隠すと、狼狽えた声で私を呼ぶアルに背を向けて、その場から逃げるように部屋に戻ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!