あべこべ異世界

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父ばかりか母まで話に加わり、しかも泣き出してしまう。  それを慰める父も悲愴感たっぷりだし、居並ぶメイドや従者達も沈み込んでいる。  私付きの執事やメイド達なんて、泣いてますよ。  審美眼はおかしいけど、いいお嬢様なのに、って。 「・・・・・・本当に独り身でいいんですけどね」  呟いて、私はこの間の見合い相手を思い浮かべた。  彼は非常に紳士的で、優しく、ブスとしか見えないだろう私を女の子扱いしてくれた。  しかし。・・・・・・美形、だったのだ。もちろん、この世界での。  想像して欲しい。  小太りでたらこ唇、細目で色黒の青年が気障な台詞を吐く姿を。  ・・・・・・吹き出してごめんなさい。  だって、耐えられなかったんです。    それで相手を怒らせてしまって、やっぱり破談。  はあ。  人間は見た目じゃないといっても、ああまで好みじゃないと辛い。  かといってこの世界の不細工。つまり私の価値観では美形の青年に恋しようにも・・・・・・と、私は壁ぎわに並ぶ従者達を見た。  体力が必要な仕事をしる使用人の彼らは、一様に痩せているし、見た目もいまいちだ。  つまり、細マッチョでなかなかのイケメンである。  記憶を取り戻してからときまいたこともある。  だが、しかし。 「・・・・・・な、なにか?」  私の視線に気付き、慌てたように上ずった声を上げるイケメン。その態度はどこか卑屈で、私の口から溜め息が漏れる。 「・・・・・・なんでもないですわ」  この世界のイケメンって、自分の容姿に自信がないせいか、卑屈な人が多いんだよね。  もちろん、中には見た目が悪くても中身で勝負だ! って感じの素敵な人もいる。  でもそんな人を周りの人がほっとくわけがなく、大抵妻帯者か恋人がいるわけで。  ・・・・・・やっぱり、一生独り身の方がいいかもしれない。気楽だし。  まだ泣き伏している母親とそれを慰める父親を眺めながら、私はぼんやりそう考えていた。  まさかその数日後、新しくやって来た警備の青年に一目ぼれをするなんて、この時はわからなかったのである。
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