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ーー数日後。
「・・・・・・なんだか最近、皆さんの様子がおかしいのですよ」
どことなくやつれた気がするアルから相談を受けた。やつれた姿も素敵! と内心悶えながら、私は尋ねる。
「まあ。どういうふうにですの?」
「それが・・・・・・」
と、アルは少し気まずそうに言い掛けた。そこへ、メイド達が数名通りかかる。
「まあ! 見て、お嬢様とアルフレッドよ。お似合いねー」
「そうね、お嬢様はお優しいし、アルフレッドも親切だしね」
「お嬢様は刺繍がとても得意なのよ。それに、声がとっても綺麗で歌がお上手なの」
「男もだけど、女はやっぱり中身が大切よね」
「ねー」
・・・・・・。
メイド達はわざとらしく立ち話を終えると、私に一礼して立ち去った。
「・・・・・・よくあるんですよ、こういうことが」
「そ、そうなんですか」
困ったように眉を下げるアルの隣で、私は引きつった笑みを浮かべた。
わざとらしい! メイド達よ、あまりにもわざとらしいぞ!
アルはそんな私を見て苦笑する。
「皆さん、何か誤解しているようですね。執事のオーギュストさんも、私がここに婿入りした場合の利点を細かく教えてくれましたし」
オーギュストー!! 気が早い、というか生々しい!!
「メイド頭のアンヌさんなんて、私の部屋を掃除してくれた際に、アリシアお嬢様の絵姿を壁中に貼っていきましたし」
アンヌー!! やめて! 一歩間違えれば嫌がらせよ、それ! ううん、すでに嫌がらせかも!!
「伯爵様は義父(ちち)と呼んでも構わないと仰っていましたし」
父ー!! 直接的すぎるわ!!
「奥方様は、その。・・・・・・余命いくばくもないというのは、本当でしょうか? 死ぬ前にお嬢様の幸せになる姿が見たいと」
母ー!! 何言ってんのあの人! 余命いくばくもない? ぴんぴんしてるわー!!
「・・・・・・そ、れは、どうも申し訳ありません・・・・・・」
私は真っ白に燃え尽き、灰になって風に飛ばされる寸前という有様で深く謝罪した。
皆・・・・・・応援してくれているのは、わかった。でも、でもさ!
・・・・・・もっとやり方を考えようよ!!
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