俺なりの『時そば』

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 私の先祖は昔そばの代金をごまかすテクニックをやりたいと言ってうまくもないそばを食べたものの、生まれつきの不器用がたたってか余計に多く金を払ってしまい、さらにその場に居合わせた落語家のネタにされてしまい今に至るまで笑い者にされてしまっている。  それを憂いた私の父は死ぬ間際にこう言った。 「時そばは呪いだ……末代までの呪いだ……どうかそれを解いてくれ……」  私は決心し、時そばの汚名を拭うような戦略を考える日々となった。今となってはこれが私のライフワークと言えよう。  つまるところ、時そばの肝は数え間違いである。しかし先祖は時そばテクの成功者が時間を使ったのを安易に流用し、しかもそれが自分にとって不利な時間帯であることを認識せずに失敗してしまった。  そこで私は不器用でも思慮が足らなくても代金をごまかせるテクニックを思いつこうと頭をひねった。 必ず、誰でも、数え間違えを起こす事象。私はそれを編み出すために来る日も来る日もアイディアを練り続ける。 「ひぃ、ふう、みい、よう、い……」 「配達でーす」  玄関の呼び鈴が鳴り、私はそれに向かう。 「はーい」  そしてハンコを押し、戻ってきた私はまた数え始める。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加