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「おお、うおわ」
驚いて肺からまともに空気も出せない。
突然のことだから時間の感覚など無いようなものだが、しばらくたつと、つま先に衝撃が走った。床が戻ったのだろう。浮遊感もなくなったと思ったら、身体が床に打ち付けられた。
「な、なんだ?」
ふらつきながら立ち上がるも、あの時いた青年もいない。真っ暗だ。
「ここは……」
「ここは、時空審問官の部屋……」
声がした。声は三百六十度すべての方向から聞こえているように感じ、声色も何人もの声が重なったように聞こえた。
「あなたは初めての体験だろうし、あなたの時空では初めての人であるからこのような状況は見知ったこともないでしょう」
「い、いきなりこんな、どんな魔法を」
「そうですね、あなたの時空では時空転送はまだ開発されていない技術です。なので私達が出る状況もありませんでした。しかしごくごく局所的な時空転送を使ったのを、歴史の線から発見し、あなたをここに呼び出したのが今なのです」
時空転送、そんなだいそれたものがどこに……。
「えー審問官様。何かの間違いかと思います。私の身の回りに不可思議な現象はなかったと思いますが。時空転送という言葉を文字通りに捉えるとするのであれば。もし、私の知らない何らかの慣用句であるとか比喩として使っているのであれば説明していただけると……」
「いや、あなたの想定している時空転送と概ね合っています。違うのは規模です。ですが私たちは規模を問わず時空転送を行ったことにのみ着目し、召喚を行うため、あなたは混乱しているかもしれませんが……」
混乱も何も、いきなりどこかに飛ばされたかのような演出に私は困っていた。
これはどういうトリックなのか。例えば途中で薬で眠らされたとか?
「ああそうですね、あなたはこのような技術がない時空から召喚されたのですから」
「先程言っている召喚というのは」
「このように閉鎖時空に転送することです。この時空は他の時空から完全に切り離されていて、ここに来るには時空転送によって召喚される他ありません」
「時空転送……」
「時空転送とはあなたがやったように、ある局所的な時空を切り取り、他の時空と入れ替える行為です」
「時空の切り取り……時間を飛ばす……」
ここで納得がいった。
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