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「それにね、愛の言葉まで半分……うふふ、
ああ、あのセリフ、忘れられないわ」
「半分?
何?
あのセリフって?」
「実はこの前、彼が、
『これから、悲しみも喜びも、すべて半分ずつにしていこうね』
って、言ってくれたの。
私、ほんとうに嬉しくって……」
「それって……あはははっ」
「何?
素敵な言葉なのに、どうして笑うのよ?」
「だってニコちゃん、忘れられないセリフって言いながら、
そのセリフを間違えて覚えてるじゃない」
「どういうこと?」
「彼が言ったセリフは、
『悲しみも喜びも半分……』
じゃなくて、
『悲しみは半分ずつ、喜びは二倍にしていこうね』
って、言葉だったんじゃない?
そうじゃないと、悲しみはともかく、
喜びまで半分になっちゃったら、もったいないじゃない」
「そう言われれば、そうね。
でも、彼は確かにそう言ってたわ」
「じゃあ、彼が言葉を間違えたんじゃない?」
「そんなはずないわ。
あんな素敵な愛の言葉を、彼は間違ったりはしない人だから」
「そう?
ずいぶん、彼を信じてるのね」
「ええ、
でも、信じるのとは少し違うわね。
彼は正直だから、信じることさえ、必要ないもの」
「ふーん、まぁ、ニコちゃんが幸せそうで良かったわ。
そういえば今日は、ヨンコも来るんじゃなかったの?」
「そうよ、
あっ、噂をすれば……
ヨンコ、こっちこっち!」
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