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その日、夕飯を食べ終えると、母さんが急に深刻そうな顔をして言った。 「花梨ちゃん、もってあと一年ってお医者さんに言われたんだって」 「え?」 花梨とは、山岸の5つ年下の妹のことだ。 先天性の重い免疫障害を持っていて、生まれてからずっと、入退院を繰り返していた。 ついこの間、山岸は嬉しそうに 『花梨、最近は体調がすごくいいんだ、今度こそ、完治するかもしれない』 と言って喜んでいたのに。 そうか。 だから山岸はそれを言おうとして、帰り際にあんな顔をしたのか。 明日は、山岸の話ちゃんと最後まで聞いてやろう。 けれど、結局、俺は山岸の話を聞いてやることはできなかった。
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