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その後警察の捜索によって、山岸の部屋からDゲート管理棟の見取り図が見つかった。
ちょうどその日の夜は、Dゲートは定期点検の日だった。
山岸は管理棟の通気口から忍び込み、調査隊の目を盗んで、その隙にゲートの外に出たらしい。
外に出たは良いものの、点検作業が終わったことに気づかなかったようだ。
調査隊が引き上げ、ゲートが閉じられてしまい、山岸はシェルター内に戻れなくなってしまった。
直接の死因は窒息死だったらしい。
酸素ボンベと、簡易防護スーツを着用していたようだが、酸素ボンベは三時間しか持たないものだった。
夜明け前には、酸素が尽きて、呼吸ができなくなり、亡くなったそうだ。
俺は、運ばれてきた山岸を遺体を見た。
一週間、紫外線と強烈な太陽光のもとに晒された山岸の体は黒く焦げて炭素化していて、ほとんど原形を留めていなかった。
そんな山岸の姿を見たら、俺は涙が止まらなかった。
山岸は、きっと妹の花梨のために、流れ星を見に行ったんだろう。
妹の病が良くなりますようにって。
"流れ星が消えるまでに、三回願い事を唱えると、その願いが叶う"
そんな嘘みたいな言い伝えを信じて。
「願いを叶える前に、お前が死んだら元も子もないじゃねぇか」
けれど、どこかまだ信じられない自分がいた。
実は、目の前の遺体は偽物で、しばらくしたら、けろっとした顔したあいつが戻ってくるんじゃないか、そんなことも考えた。
「……馬鹿だよ、お前。お前がいなかったら俺はこれからどうやって宿題片付ければいいんだよ」
語りかければ、どこからか声が聞こえそうな気がした。
「……花梨は、どうすんだよ、お前が見舞いに来るの楽しみにしてたのに………」
当然返答はなく、霊安室に、俺の声が虚しく響くだけだった。
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