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「ついに、だな」
更衣室で出発の準備をしていると、すでに防護スーツに身を包んだ 瀬戸光太郎が、俺のもとにやって来た。
「ああ、そうだな」
俺はスーツに足を通すと、それを上に引き上げた。
肩にかかるずっしりとした重量感。
それなりにトレーニングをして来たとはいえ、15キロ近くある防護スーツはやはり重い。
「まさか高校で一位二位を争う問題児だった鹿島と俺が、調査団に選ばれるなんて………7年前は誰も予想しなかっただろうな」
ニヤニヤしながらそう言うと、瀬戸は俺の肩に肘をおいて体重をかけてきた。
「重いっての!」
瀬戸の腕を振り払うと、俺はカバンに手を伸ばした。
そして、手帳に挟まっていた一枚の写真を取り出した。
その写真には二人の子供が写っていた。
右端に写っているのは、10歳の頃の俺だ。
そして、その隣にいるのは………。
「だっはっは!ガキの頃のお前?目付き悪くね?」
背後からそれを覗きこんだ瀬戸が、耳元で大声で笑った。
「うるせぇなぁ、鼓膜が破れるっつーの」
すぐ隣にあった瀬戸の顔を押して遠ざけると、俺はベンチに腰を下ろした。
この写真は15年前のものだった。
レンズ越しにこちらを睨み付けている俺とは対照的に、俺の隣に写る、近視の分厚い眼鏡をかけた子供は、人懐こい笑顔を浮かべている。
隣に腰掛けながら瀬戸は言った。
「隣に写ってるヤツ誰?」
「こいつは………」
当時の事を思い出した俺は、視界が霞んで、目頭が熱くなるのを感じた。
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あれは、俺が中学一年の冬の事だった。
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