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ひとしきり話終えて、満足げな山岸に向かって言った。
「……お前ってさ、勉強できるわりには、そういうこと信じちゃうタイプだよな、ロマンチストっていうか」
「え、そう?」
キョトンとした目で山岸は俺を見た。
「そんな非科学的なこと、なんで信じるんだ?」
「非科学的かもしれない……でもさ、その可能性がゼロだって証明できる?」
「え?」
「悪魔の証明って言うのがあってさ、ようするに、不可能なことを証明するのはとっても難しいんだよ……アメリカの女流作家のパールバックっていう人も
"どんなことも、不可能と証明されるまでは可能である、そして不可能なことでさえ、今だけのことかもしれない"
って言ってるんだ」
「へえ……」
「可能性はゼロじゃないなら、それにかけてみる価値はあると思うんだ」
山岸は俺に話しているというより、自分に言い聞かせているようだった。
捲し立てるように喋った後、急に山岸は暗い顔をした。
「……あのさ、鹿島」
「何?」
しばらく黙りこむと、思い出したように山岸は立ち上がった。
「やっぱり何でもない……もう遅いし僕帰るね」
「おう、またな」
「うん……バイバイ」
去り際の悲しそうな山岸の表情が、やけに頭に残った。
静かになった部屋でしばらくぼんやりした俺は、ひとり呟いた。
「さて、ゲームの続きでもするか」
そう思って立ち上がる。
ふとテーブルの上を見ると、山岸の本が置きっぱなしだった。
「……ま、いっか、明日返せば」
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