2

7/12
前へ
/24ページ
次へ
ひとしきり話終えて、満足げな山岸に向かって言った。 「……お前ってさ、勉強できるわりには、そういうこと信じちゃうタイプだよな、ロマンチストっていうか」 「え、そう?」 キョトンとした目で山岸は俺を見た。 「そんな非科学的なこと、なんで信じるんだ?」 「非科学的かもしれない……でもさ、その可能性がゼロだって証明できる?」 「え?」 「悪魔の証明って言うのがあってさ、ようするに、不可能なことを証明するのはとっても難しいんだよ……アメリカの女流作家のパールバックっていう人も "どんなことも、不可能と証明されるまでは可能である、そして不可能なことでさえ、今だけのことかもしれない" って言ってるんだ」 「へえ……」 「可能性はゼロじゃないなら、それにかけてみる価値はあると思うんだ」 山岸は俺に話しているというより、自分に言い聞かせているようだった。 捲し立てるように喋った後、急に山岸は暗い顔をした。 「……あのさ、鹿島」 「何?」 しばらく黙りこむと、思い出したように山岸は立ち上がった。 「やっぱり何でもない……もう遅いし僕帰るね」 「おう、またな」 「うん……バイバイ」 去り際の悲しそうな山岸の表情が、やけに頭に残った。 静かになった部屋でしばらくぼんやりした俺は、ひとり呟いた。 「さて、ゲームの続きでもするか」 そう思って立ち上がる。 ふとテーブルの上を見ると、山岸の本が置きっぱなしだった。 「……ま、いっか、明日返せば」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加