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彼は、僕に視線をゆっくりと戻すと静かに頷いた。
「僕の実の両親は、小さな事業を共同経営していましてね。
そのビジネストリップの帰り道、事故で二人一緒に亡くなったんです」
しかも、ちょうど彼の六歳の誕生日の一週間前だったという。
「でも彼らは、両親の反対を押し切っての結婚だったものでね。
彼らが亡くなった後も僕は、どちらの祖父母とも連絡すら取れませんでした」
その結果、彼を保護する人もなく、結局、施設に行くことになったらしい。
「だから、冠汰さんとは逆。
僕は、実の両親の顔は憶えていたのですが、祖父母は顔すら知らない」
彼の顔に、複雑なものが淡く浮かぶ。
しかし、それを嫌うように彼は、カップを持ち上げながら続けた。
「でもね、僕にも幼い頃の日本の思い出が一つだけあるんですよ」
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