第7章 ブラザーフット(つづき)

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それは、まだ四歳だった頃。 両親に連れられて初めて訪れた日本は、ちょうど桜の綺麗な季節だった という。 「その時の写真もあるのですが、正直、場所は、よく分からないんです。 でも、とにかく桜があまりにも綺麗で。しかも穴場だったのか ほとんど人のいないその場所でピクニックをして はしゃいだ記憶があります」 しかし、彼の実の両親との日本の思い出は、それ一つ。 「それでも彼らとの思い出がある分、僕の方が、まだラッキーなのかな」 だが僕は、別に自分の生い立ちを彼よりも不幸だとは思わなかった。 「そんな事ないですよ。 僕は、生まれた時から両親がいなかったので、 そういうものか、って感じで生きてきましたから」 「でも、子供なりの社会が出来てくると、 どうして自分には両親がないのかって思いませんでしたか?」 しかしこれに、僕は思わず苦笑した。
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