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そしてその声が、ゆっくりと空気の中に溶けていく。
そんな短い沈黙の中で、彼がポツリと呟いた。
「でも、もしかしたら僕は、冠汰さんが得るべき幸せを貰ってしまったの
かもしれないですね」
「えっ……?」
すぐには、彼の言う意味が分からなかった。
しかし、
「実は、父たちは、僕と出会う前に貴方を随分と探したようなんです」
そう言われて、思い出した。
確か、彼らが僕を探し当てる事を諦めた時ジョージさんと出会い、
運命を感じたと以前に聞いた。
そして、やっぱりその事を口にする彼の言葉を、僕はそっと遮った。
「ジョージさん」
フッと言葉を切った彼が、真っ直ぐに僕を見つめる。
その彼に、僕は小さく微笑んだ。
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