第7章 ブラザーフット(つづき)

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「ジョージさんが得てきた幸せは、全部、貴方が得るべきだったものですよ」 えっ……。 ジョージさんの灰色の瞳が、小さく見開かれた。 「だって、お父さんと清乃さんが一生懸命、愛して育てたのは貴方です。 僕ではない。 そしてその頃に、僕が彼らと出会わなかったのは、それが僕の定めだった からでしょう。 でも僕も、今までの自分の人生を不幸だったとは思ってません。 それなりに良い人たちに囲まれ、 楽ではなくても、それなりに恵まれていたと思っています」 「冠汰さん……」 ジョージさんの顔が、小さく複雑に歪んだ。 そんな彼を前に、僕の胸に前回の旅行の終わりに 空港で、ジョージさんが掛けてくれた言葉がほんのりと蘇ってくる。 たぶん僕たちは、分かり合える良い関係になれると思う。
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