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「あっ、カンタとナツミって呼んじゃダメですか?」
しかし、チラッとナッちゃんと視線を交わした僕は、
彼に視線を戻して、かぶりを振った。
「いいえ。じゃあ僕たちも、ジョージって呼んでもいいですか?」
それにジョージさんは、大きく笑顔を広げて頷いた。
「もちろん! あぁ、良かった。
ずっと『さん』付けで呼んでて、なんか、どうにもどこかむず痒くて
仕方なかったんですよ」
そして、もう一度僕の手をキュッと握って「ありがとう」と微笑む。
それから、その手を離した彼が、今度はナッちゃんに手を差し出した。
「ナツミ、ステキな旅行をありがとう」
ところが、彼の手に彼女が手を伸ばすと、不意に彼の長い腕が
そっと彼女を抱きしめた。
そして、彼女の耳元で細く何かを囁き、
腕を緩めて、彼女に小さくウィンクする。
僕は、そんな彼らの様子を半ば凍り付いたままで見詰めていた。
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