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そして程なく、僕たちは、柔らかなビロード貼りの大きな座席に
並んで収まった。
「ご住所のほうは、あらかじめ彩野社長より承っておりますので、
他に御用が無ければ、このままご自宅まで向かわせて頂きますが
よろしいですか?」
運転席に収まった寺崎さんに、鏡越しに尋ねられる。
それに頷くと、
「かしこまりました。
それでは、これより私の背後のボードを閉めさせて戴きます。
これを閉めますと、一切の音は、運転席のほうには聞こえなくなります。
恐れ入りますが、御用の際はボードをノックして頂ければと存じます」
では、出発いたします。
その言葉が終わると同時に、スルスルと前の座席の背面にあった
アクリルボードが天井まで伸びていき、滑るように車が走りだした。
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