第7章 ブラザーフット(つづき)

27/33
前へ
/38ページ
次へ
そして程なく、僕たちは、柔らかなビロード貼りの大きな座席に 並んで収まった。 「ご住所のほうは、あらかじめ彩野社長より承っておりますので、 他に御用が無ければ、このままご自宅まで向かわせて頂きますが よろしいですか?」 運転席に収まった寺崎さんに、鏡越しに尋ねられる。 それに頷くと、 「かしこまりました。 それでは、これより私の背後のボードを閉めさせて戴きます。 これを閉めますと、一切の音は、運転席のほうには聞こえなくなります。 恐れ入りますが、御用の際はボードをノックして頂ければと存じます」 では、出発いたします。 その言葉が終わると同時に、スルスルと前の座席の背面にあった アクリルボードが天井まで伸びていき、滑るように車が走りだした。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加