第7章 ブラザーフット(つづき)

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「冠くん?」 にわかに押し黙った僕に、彼女が、ちょっと心配そうに眉根を曇らせた。 だが、そんな彼女の顔を目にすると、今度は耳にジョージさんの言葉が蘇る。 もし冠汰さんよりも先に彼女に出会えていたら、 僕は、確実に彼女を口説き落としてましたよ。 そしてやっぱり僕は、それに引っ掛かった。 「ナッちゃん」 もう一度呟いた僕は、何を聞きたいのか少しだけ迷った。 しかし、 「さっき、ジョージさんに何言われたの?」 一瞬、「ん?」と小さく首を傾げた彼女は、思い出したように笑顔になる。 「フフフッ、元気でって」 「それだけ?」 しかし彼女は、後はちょっとはにかんだように笑顔を変えて 答えてはくれない。 それが僕の中でジョージさんの言葉と結びつき、やっぱり聞いていた。
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