第7章 ブラザーフット(つづき)

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僕たちは、淹れたてのコーヒーを前に リビングで、斜向かいに腰を落ち着けた。 「へぇ。冠汰さんって、コーヒー淹れるのも上手なんですね」 やはり、一流のビジネスマンだからだろうか。 彼からは、随所にさり気ない褒め言葉を投げられる。 「ありがとうございます」 だが僕はといえば、素直にお礼は返しつつも、それに対する社交辞令も 上手く返せない。 そして、相変わらず清乃さんの策略の意図も読めてなかった。 ところが、そんな僕にジョージさんは、 カップをそっと口元から離しながら静かに尋ねてきた。 「冠汰さんは、何月生まれですか?」 「四月ですけど……」 しかし、会話のきっかけにしては唐突で、 いささか戸惑う僕に、彼は小さくコーヒーをすすって言う。 「じゃあ、僕は六月生まれだから、冠汰さんのほうがお兄さんですね」
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