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――プルルル、
『あ、もしもし。俺だけど、おじいちゃん?』
「……? タカシかい?」
受話器から、聞き覚えのない声が耳に届く。
騙されたフリをしてみる。
『うん、そうそう。タカシ。ちゃんとご飯食べてる?』
「ああ、おかげさまでね」
声が違うと分かっていても会話を続ける。
『そう、良かった。あのさ、財布落として――』
「金なら貸さないぞ。そういった電話なら切るぞ」
詐欺か。
「……なんだったんだい、さっきの電話は」
部屋の奥から、おじいちゃんが心配そうに顔を覗く。
「イタズラ電話だよ。ああ、目が見えてないんだから。そこに居て」
「すまないねぇ、タカシ」
「いいって。あ、それよりさ、俺…会社でミスってさ、ごめん。
お金、貸してくれない?」
「ああ、タカシの頼みならいくらでも。ただ、……」
「ただ?」
「さっき、ヘルパーさんと出かけた時に財布を忘れちゃってね。
ヘルパーさんが取り戻ってくるまで待っててくれないかい」
「ああ、分かったよ」
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