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プロローグ
彼女に呼び出されたのは、ある晴れた春の日だった。
優から渡された手紙が始まりだったと思う。優は小学校からの友人で俺が高校で心を許している数少ない1人だ。今でも仲よくしてくれてる事には感謝している。
当時、俺は教室の窓際の席だった。窓からは校庭しか見えなかったが、そこに生えている桜は丁度花盛りで中々見応えがある。そんな訳で数週間ではあったものの、校庭観察は俺の日課になっていた。
その日も、いつもの様にぼんやり窓に体を向けていた俺の元に優が来た。
「おはよー、蒼梧。相変わらずぼーっとしてんな」
「はよ、何だよにやにやしてんな」
何故かニヤつきながら挨拶してくる優にそう返す。すると優は嬉しそうに鞄から封筒を取り出した。
「見ろよ、ラブレター」
そう言って優はそれを俺に差し出した。
「気持ち悪いな、男にラブレターなんて。ついに頭壊れたのか」
見慣れない物と言葉に、ついよく分からない言葉が口を出る。
「んな訳無いだろ。何で俺がお前に渡すんだよ」
「冗談だよ。でも、お前これ」
「預かったんだよ。そんぐらい分かるだろ」
馬鹿か、と頭を叩かれる。
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