私の半分、埋めて下さい。

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「笹屋は、良いところこんなにあるのに、悲しいこというなよ。能力が人の半分なんてさ。少なくとも、努力家なとこと優しさとネガティブさは人一倍だろ」  なんて言って、笑って諭してくれた。ネガティブは余計ですよと言いながらも、心が軽くなったような気がする。精神的に余裕が出てきて、先輩の人気の理由の一つは、こういうことを、さらりと嫌み無く言うところだと思う。先輩の性格を分析していると、冷静さが戻ってきた。強ばっていた顔も、笑みがこぼれ始める。先輩にもう一度お礼を言い、パソコンに向き直る。腕を捲ってやる気を出したところで、手元の資料の半分を先輩に奪われた。驚いて先輩の顔を見る。 「能力が半分なら、俺が補填してあげる。二人でやれば、時間も半分。神様に半分しか愛されなかったんなら、俺がもう半分、愛を注いであげる」  先輩は、甘過ぎる言葉を吐いたと思えば、爽やかな笑顔で仕事を片付け始めた。私の欠けた半分の能力と神様からの愛情は、どうやら補充されるための空きスペースだったらしい。これから、どうされてしまうのかしらと多大な不安と小さな喜びが混じり合うなか、私は仕事を再開した。
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