私の半分、埋めて下さい。

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「神様は、私を半分しか愛さなかったんだ」  古い記憶を辿りネガティブな分析をしていたら、つい、暗い独り言を声に出た。自分が思っている以上に沈んだ声色で驚いた。それでも良いかと、一区画だけ光る蛍光灯を見る。一瞬でも目が眩んで、明るい光を求めた自分に苛立ちが増す。 「神様のバカ」  もう一度、悪態をつく。誰もいないと思っていたし、誰かが深夜のオフィスに入ってくるとも思っていなかった。ところが私は、運も人の半分なのだ。 「お疲れ。なんで神様?」  不思議そうに、だけどおかしそうに笑いを堪えた男性が入って来ていた。私の暗くて恥ずかしい独り言を、近くで聞かれていたのだ。よりにもよって、社内で一番目立っている憧れの先輩に……。  先輩はレモンスカッシュのような爽やかな笑顔で、カフェオレを差し出してくれた。私は、暗いオフィスにいるはずの無い人が現れたことに驚いた。しかも、仕事が出来て社内のエースで、誰もが認める人気者の三川幸先輩。先輩にこんな暗いオフィスは、似合わない。急なことで頭が追い付かず、どぎまぎする。間が空いて、その無言を埋めようとさらに慌てて、うわずった声でバカ正直に答えてしまう。 「お疲れ様です! えぇと、自分の能力の低さに嫌気が差してました。それより、先輩はどうして会社に? 忘れ物ですか?」  情けない独り言を忘れて欲しくて、話題を変えようと早口でまくし立てた。先輩は、そんな私の挙動不審振りを楽しそうに見ている。クツクツと笑いながら、トロ臭くなかなか受け取らないカフェオレを、デスクの上に優しく置いてくれた。たった、それだけでスマートに見えるなんてズルいと思う。 「忘れ物はしてないよ。飲み会に誘われて、しばらく飲んでたんだけど、笹屋が来てないから、会社によってみたんだ。また仕事、押し付けられたんだ?」
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