「突然ですけど、部屋行っていいですか?」ほど困るものはない

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「あーもー。そういうことか…」  柊は大きく嘆息した。未だ寝癖が直っていない髪をぼりぼりと掻く。  実家でよく聞くものと似た音した。母親がいつも10分で駆除すると豪語していた鼠の運動会だ。その息子である柊は「ととととと」という軽やかな音に愛着すら覚えるたちなので、何もネイビーシールズ御用達の拳銃を取り出す必要はないと思ってしまう。 「…。…」  だが。東京の、自分の部屋の、もう直ぐ憧れの先輩がやってくるシチュエーション。  寛大な心を持つことなど、到底できない。 「獲物を置いてさっさと出て行け」  ツヤと光るセロハンテープの十字架を見つめたまま、柊は冷たい声で通告する。  肩越しには両手両足で天井をつかみ、柊を睨みつける女の姿がった。
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