「突然ですけど、部屋行っていいですか?」ほど困るものはない

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 ジョン・コンスタンティンなら間違いなくぶっ放している。悲しいかな、柊はバイト月収4万円の貧乏大学学生だ。下級悪魔一匹のために壁に大穴をあけるわけにはいかない。正直割に合わない。 「クソ、こういう時だけ実家に帰りたくなる…」  実家なら隣の家は10キロ先だ。高校生までアメリカ並みの土地感覚で生活していた。柊は悪態交じりに漏らした。  先ほどゴミ袋に突っ込んだ聖水を試してみるか、という案が頭をよぎる。慌てて首を振った。マジで誰かの聖水でてきたら洒落にならない。罰ゲームすぎる。 「なんかはあるだろ…」  柊は綺麗になりすぎた部屋を見渡す。時計は約束の時間まであと7分半。悠長に構えていたら橙先輩は絶賛悪魔退治中の己の姿を見ることになるだろう。格好いいと惚れてくれればいいが、それは夢飲みすぎだろう。邂逅は、絶対に避けなくてはならない。 「聖弾…使えない、聖書…ダメだ時間かかる。聖水…正直怖い、ああでも聖水…」  端から聞いていれば相当追い込まれた奴の台詞だろう。昨日の飲み会に参加した友人が居合わせていたならば、「お前の純情をおもちゃにする気はなかったんだ!」と弁明を始めるだろう。間違いなく。 「ふざけんなよ、ここまで気合い入れたのに間に合わねぇじゃねぇかっ!!!」  声を聞く限りは、掃除が間に合わない男がヒステリーを起こしているとしか考えられない。無骨なショットガンを構えているとは夢にも思わないだろう。
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