「突然ですけど、部屋行っていいですか?」ほど困るものはない

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「うわ、最悪。涎でプール作ってやがる…。ご褒美と思えない俺からしたら最悪としか言えねぇ…」  柊の目が掃除したての床を捉える。雑巾掛けしたフローリングの上には、濁った色の水滴が落ちていた。  その先には、踏んだ時に拾い損ねた代物が落ちている。ローテーブルの死角に転げていたらしい。 (昔、あれで踏み絵ごっこしてたら師匠に半殺しにあったなぁ…)  改めて蘇る記憶に柊は渋い顔をする。ついでに妙案も浮かんだ。  「…。…」  正直やりたくなかったが、今まで挙がった選択肢の中では一番まともだ。柊は敵との距離を測りなおす。優しそうと当たり障りなく称される顔は、別人のように険しいものになっていた。  仏教徒ならば「南無三」と唱えるであろうところだ。 「万節叶え給え」  悪魔払いは口走る。ショットガンをベッドに放り投げ、床の十字架に飛びついた。  
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