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「とりあえず山」の崩壊跡からは、ありとあらゆるものが発掘される。すべては柊の想定を超えていた。
引越しの挨拶まわりにと持たされた出身地名物のハスカップクッキー、これはいいものだぞと押し付けられた人生啓発本、「人生の悩みの七割五分は筋トレで解決する」。残り二割五分はどうすればいいんだ。
先月のサークル勧誘活動時に使った飛びます太郎の着ぐるみやゲームセンターで戯れにとった名前も知らないキャラクターのフィギュアもある。
「げ、何踏んだ!?」
足の裏から伝わってくる柔らかい感触に悲鳴をあげる。お土産にもらったおっぱいマウスパットだ。柊は声にならない悲鳴をあげ、それもゴミ袋に放り込んだ。
「お前も、もうちょっと早く教えてくれよ…」
柊は「とりあえず山」の支えに使っていたレミルトン・アームズM1100に声をかける。ガスオートショットガンは「知ったことか」と言わんばかりに鈍く光った。
「先輩の地雷がわからない…。へえ、柊君そういうの好きなんですね。ここら辺だとどこでサバゲーってできるんですか?とか聞かれても困るし。とりあえずお前もクローゼットに入っててもら…
………………ジーザス…」
カーテンすら開けていない部屋の中で柊は低く呻いた。崩落した「とりあえず山」の奥に、秘境ができていたのだ。いつもらったか記憶も定かでないウイスキーの小瓶が倒れている。中身が染み出して小さな池を作っていた。それはこの際、目をつぶろう。
怪しく黒光りする小さなお客様がいる方が大問題だ。
「やっぱ年末に一回掃除するべきだった!!」
なぜか鍋敷きの隣にぶら下がっていたスリッパを握り、柊は黒い妖精さん退治を始めた。
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