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魔法を作るというのは一口に言っても相当難しいものだ。
地球で例えるならフェルマーの最終定理やアインシュタインの相対性理論に並ぶレベルで高度なのだ。
検証、仮説、実践、分析、改良の作業をループさせてようやく荒削りな魔法イメージを作り出す。
そこからは言葉のパズルになる。言葉によって生じる術者への影響は大きく、それらを理解させなければいけない。
よく言葉を噛む人がいるが、それは「その言葉の意味を脳内で理解していない為」である。考えるより先に口や手が出るタイプの人間は根本的に改善の余地はないが、イメージを膨らませて見せかけだけは取り繕うことは出来る。これがいわゆる「台本を棒読み」である。
ニュースを読むアナウンサーは自分がこれから読む原稿の内容を瞬時に理解し、更に正確に、より通りやすい声で、一定の速さで読み、視聴者に理解してもらわなければならない。故に最低でも大学卒業レベルの理解力、読解力、語彙力がなければならない。だがそこに高学歴が必要と言う壁はないらしい…。
話を戻そう。
「またのご利用をお待ちしております」という言葉が魔法だとしよう。この言葉の真意を理解していなければ、棒読みになってしまい、恐らく必ず一回は噛んでしまう。
理解していなければ噛む=言葉としては成立しない=魔法は不発に終わる。
つまり、発動させる魔法に具体的なイメージや作用、またはどのような結果を生み出すかを理解していなければならない。ただ闇雲に魔法を乱発してもそれは「バーカバーカ、しねしね」と連呼しているキッズと一緒なわけだ。
当然そこに意味などなく、ただ体力(魔力)を無駄に垂れ流すだけ。
だが、そのバーカバーカ連呼する者が明確に相手に死を突きつけるようなイメージを持ったなら。
「死ね」
人によってはこれで自殺までしてしまう。
そこまでのイメージを持つ奴が勇者だ。無駄に正義感があり、それを使命として飾り立て、更に「世界を平和に」というバカでかいイメージを持ってしまったが故に彼に対しハデスは畏怖している。
そう、そのイメージさえ壊してしまえばいいのだ。
例えば圧倒的かつ絶望的な力の差を見せつけ失望させる、あるいは勇者が齎した結果を何らかの形で植えこむ。
どちらにせよ俺はそれを遂行する術を養っている、その為に俺は魔法を生み出したのだから。
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