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「よっ、はっ、ほっ、と。」
「くそ、くそぅ、クソが!何故当たらない!この私が獲物を前に、くそ!」
あぁ懐かしの地獄の訓練。まぁあれと比べれば今の状況はかなりラク。師匠はこれの万倍をよけろ、と無理難題突き付けてきたしな。
暗闇でも視界の効く「魔眼(まなこ)」を死に物狂いで会得していて助かった…。でなけりゃこの矢一本一本に吹き付けられている毒か何かで動けなくなって「俺が晩御飯」になってしまう。ライオンの群れに阻まれた草食動物の走馬灯が手に取るようにわかる。
しかし、ただで食われるわけにはいかない。むしろミイラ取りをミイラに、せめて正体だけでも…!
「あ、そうか。この為の魔法か」
「…?」
敵さんの動きも声も聞こえなくなり、風に擦れる葉音とそれを奏でる演奏者である風の吐息。
幸いにも相手は舌なめずりの最中であると見た。だとするなら、やはり相手の背後を取りあの有名なセリフをいうしかない。豆腐メンタルなあの軍事オタクの、あのセリフをな。
そうと決まれば使える魔法を思い出す。俺の脳内に刻まれた魔方陣「魔法記録(マジックプレイヤー)」に検索ワードを吹きこむ。
視界に見えない敵を捉える……検索結果、1件。
たはー、少ねえ!ヤバいな、二つ三つ欲しかったが背に腹は変えられない。魔方陣から魔法のイメージと詠唱を抜き出し、詠唱する。…っと、勘付かれては計画が台無しだ。まずは誰でも使える「ファントム」を使おう。
それからそれから……。
あぁ、隠密と言えばダンディな段ボール蛇がいたな。
傭兵と言う点では似通っているから、まぁいいだろう。
ひとまず魔法で足音を消し、ゆっくり近づいて…。敵はちょうど真上の木の枝に座ってるみたいだ。
慎重に、慎重に。冷静に、冷静に。
「……消えた?どこだ?いや、ファントムならこのまま打てば当たる。ふっ、あれで消えたことにして目眩しか。さすがは人間、やることが二流だな。」
これはチャンスですね。あとは師匠からいただいたナイフを逆手に持ち、目前にいる敵の首筋に当てるだけ。
よし、届いた。あとは
「獲物を前に舌なめずり…、三流のやることだな」
よし決まった。あとはどうにかなる。抵抗するなら殺せばいい。どの道人間だろうが構わん。
「ヒィッ!嘘だろ?!この私が…ダークエルフのこの私が背後を?!」
ダークエルフ?
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