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10m程の高さから落下するのに約1秒足らず。…もっとも、この世界の重力が地球と同じならばの話。だがそんな論理的思考に勝ったジャパニーズサムライスピリット!
気絶したダークエルフを空中で抱きかかえ、どうにか体勢を立て直し着地。
あぁ魔法使えば良かったと思った頃には既に俺は武装した…女エルフ達に武器を突き付けられている。
形成逆転。赤い文字でズドンとそこいらに現れそうな勢いで今、俺の惨めな心境が硬くなった心をあやしている。
「貴様、我らが酋長に何をした?我々の……いや、とにかく酋長を離せ!」
「しゅ、しゅーちょー?なんだそりゃ?」
初耳なワードにいささか狼狽する俺。勉強はあまり得意ではなかったんでね…。あと、活字がウルトラ苦手です。
「その方は我々ダークエルフ族の長なのだぞ!人間如きが気安く触れていい相手ではない!」
「離せ!さもなくば、打つ!」
八方塞り。今更このムッチムチなダークエルフを盾にしようにも武器はさっき落下した弾みでどこかに消えたみたい。都合良すぎっス。来世で会ったらニートナイフって名前にしてやるから覚えとけよ。
「む……んん?ここは天国?」
肩に担がれたままのダークエルフ酋長が意識を取り戻した。まぁ気絶してるだけだから大したことはないが、一応肩から降ろし、立ち膝した俺の太ももを枕がわりにして横に寝かせる。
「大丈夫ですか?あの木、腐ってたみたいで…」
「まさか…あなたそれを私に伝える為に?」
「いや、ちが…」
よく見たら、美人な人だ。浅黒く灼けた肌はやや強めの小麦色ではあるが、それでもキメの細かい肌質は自然の食べ物のおかけだろうか…。
鼻筋から通るTゾーン、そしてキラキラとした眼差し。大きな瞳に相反して唇は小さく、さながらシチューの中のマッシュルームほど。
数秒たっぷりと見惚れてしまった俺は、取り繕うように…と言うよりは体勢的に必然と上目遣いになったダークエルフ酋長のそのあまりの美しさに
「そう、です。たまたま俺、ここに迷い込んでしまいまして。猟場とは知らず、ごめんなさい。」
と平謝りするだけの思考回路がすっと働く。
歌にあったな、ショート寸前!みたいなの。
「ううん、こちらこそごめんなさい。」
ダークエルフの瞳からすっと涙が零れていたが無意識に俺はそれを親指で拭ってしまっていた。
THE.キザ野郎乙です、俺。
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