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「おー、なんか人間が出てきたぞ。…どういうことだ?」
「なんだこのコスプレ親父。どういうこと?って、こっちのセリフだたわけ。」
鋭利な何かがいくつも殺意を携えながら俺の首筋をくすぐる。極度に緊張した空気が張り詰め、今にも俺は刺し殺されてしまいそうだ。
…と言いますか、なんで俺はここにいるんだ。コスプレ集団の集会所のような場所に突然…いやホント突然現れたんだよ。普通にバイト終わって自宅に帰ろうとしたんだ。
前触れ?日常にそんな大量に張り巡らされた伏線すべてを拾い集めて神棚にでも飾ってたとするなら、もしかしたらあったかもしれない。
だがご生憎様。伏線なんて知らない。
それにコスプレは趣味じゃない。まぁ見る分には好きよ?
でもいきなり現れたコスプレ集団に殺されかけてる状況だぞ。
服装だって普通…まぁ、バイト中暑かったからパーカーをカバンに入れ…、あれ?
「お、俺のカバンは?」
「カバン?知らん。いやホントに」
「どうなってんだ…」
「あの、人間よ…。」
それに頑なにキャラを崩さないこのコスプレ親父、俺を人間人間と、さも自分が魔王にでもなったような雰囲気でさ。どうせくじ運悪くて、さして特徴のない魔王をやらされてるんだろ?俺に殺意を向けている近衛だって見たところ得物はミッドレンジの剣と槍。数は大した数じゃないからコイツらもくじ運悪くてやらされてるんだろうな。
「可哀想に。お前ら、望んで請け負った仕事でもないのに無理やり誰かに決められて今こうして俺に剣やら槍やら向けてんだろ?構え方もまちまちだしな。」
「…」
なるほど、だんまりか。よほどこの魔王に対しての忠誠かっこわらいがあるんだな。発言すら許されない状況で、己の主かっこわらいに尽くす素振りを見せるだけ。
あわよくば大臣の役でも勝ち取りたいと。
「なぜ」
一人がぼそりと、疑問を突きつける。…まぁ突きつけられてるのはロングソードなんだけどさ。んなこたぁどうだっていい。
「なぜ我々が本物の近衛でないとわかったんだ?」
「教えねぇよ。少なくとも客人?に対して現在進行形で敵意丸出しの奴らにはよ。」
「貴様は魔王様を侮辱した。客人であろうともその愚行、見逃すまい」
助けてマジで。話通じない。
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