547人が本棚に入れています
本棚に追加
いたたまれなくなって来たあたりで、学園長らしき腹回りのオッさんがポテポテとした歩き方でやって来る。空気読め。
「どうも、学園長のトーマス・アンダーソンです。
お取り込み中申し訳ないのですが、入寮手続きなどを済ませていただけますかな?
次の方の審査もありますので」
偉く腰の低いオッさん、というのが第一印象。問題は学園長の視線がガレさんに向いていて、その眼差しが侮蔑の色合いを示していたこと。
どことなくムカッ腹が立ってきたが、どの道さして見かけない相手だろうし、ひとまずガレさんを抱きかかえながら適当な返事をし、天下一…もとい、闘技場を降りる。
「チッ、奴隷風情が」
やっぱり。予想はしていた。
すれちがい様に、明らかな偏見を示す学園長。もしこの学園長が、相当なキレ者である程度の未来を見ることが出来るなら、その未来に俺はいない。
学園長が見る未来は、俺に殴られていて、それを口実にガレさんと学園入学の権利を奪ってしまうというバッドエンド。
まぁ、もしも話なのでそこまで気にする必要はないが、バナナに足を取られてすっ転んでしまえと念をしておいたので幾許かの気休めにはなった。
「では、ごきげんよう学園長」
「あ、、あぁ」
突っかかってこなかったからなのか、焦りを見せる学園長。もしかすると、この学園は経営難なのではないかと勘違いしてしまう。様々な特典で勧誘→あからさまな挑発をして特待取り消し→法外な額で和解させ、入学させる。
このやり口で懐を暖かくしている可能性は十二分にある。
あーやだやだ、人間って生き物は。
俺も一応はその部類に入ってるんだけど、中身は悪魔やらヴァンパイアだと信じてるし、俺。
あるいは刃折れの剣を背負ったセクハラ金髪野郎みたいに秘められた力か何かを持つ人間みたいな人間ではない生き物。
でなきゃ人間が嫌だとか言わないし。
闘技場を出ると、数名の入学希望者らしき男に囲まれた。見るからにチンピラなんだが。赤、青、黄色の髪色をしていて、まるで信号機だ。
そのシグナルチンピラが何か因縁でもふっかけるのかなと身構えていると、3人いるシグナルチンピラが土下座をし始める。
ゆっくりとした動作で。
そして、口々に言う。
「「「あの教師どもをぶっ飛ばしてくれて、ありがとうございました」」」
「は?」
最初のコメントを投稿しよう!