5 ダメだ、こりゃテンプレ

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「いいですか、私のスリーサイズは上から91、59.6、88.4です。 ミカサは88、58、90です。 ふっ」 「なになになになに!なんでわかるの…、ハッ、まさか千里眼」 ガレさんは、したり顔で首肯する。 そんな瑣末な張り合いの為に、人間達がこぞって欲しがる千里眼という希少な能力を使うとは…。 いや俺は「魔眼(まなこ)」があるから、かなり及ばないが代用は可能。 …当たり前だがスリーサイズをミリ単位はおろか、仮にメートル単位だろうが見ることはできないぞ。 出来るとしたら肌着の色を見ること位。それでもやるつもりはない。 ちなみに何故見れるのか。 服の下の武装を確認するためだ。あとは半径5m以内の魔力の流れ、風の動きなどを視覚的に捉えるためだ。 決して透視のためじゃない、決して。 「きーっ、で、でも形は私のが綺麗なはずだし、それにアンダーとの差は私のが上のはずよ!」 「ぐぬぬ」 「リアルにぐぬぬっていう人初めて見たわ」 この、どうしようもない名状しがたい不毛な争いに終止符を打ったのは、俺の腹の音のロングトーンにグルーヴを刻むが如く軽快かつリズミカルなドアのノック音だった。 俺は思わず、魔眼を発動してドアの外の来訪者を確認する。 ドアの取っ手部分あたりに腰があることから、身長はあまり高くない。 やや丸みのあるシルエット、女性の肌着らしきものが映っていて、武装はしていない。更に魔力反応もないことから、敵意はないはず。 ふぅ、と安心しつつドアに近づきつつ「はーい」と気の抜けた声で応答する。 「寮長だ。」 「知ってたわ。はいはーい」 ドアをゆっくり開けると外にいたのは仁王立ちしている寮長だ。先刻承知の通り、開ける前からわかってましたとも、ハイ。 「先ほど言い忘れたことがある。荷ほどきの最中悪いがあがらせていただきたく」 「あ、いいですよ。 散らかってすらいませんが、どうぞ」 寮長さんに入室を促すと、「よしなに」と一言断りながら部屋に入る。 この世界の建物ないし寮の部屋に玄関はなく、土足で上がるのが通例となっている。 無論だが泥落としマットなどないので、雨の日の来客はなるべく避けたいと感じる俺は食べそびれたスイートポテトを食べるべく寮長の後をついていくのだった。
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