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「いいですか、私のスリーサイズは上から91、59.6、88.4です。
ミカサは88、58、90です。
ふっ」
「なになになになに!なんでわかるの…、ハッ、まさか千里眼」
ガレさんは、したり顔で首肯する。
そんな瑣末な張り合いの為に、人間達がこぞって欲しがる千里眼という希少な能力を使うとは…。
いや俺は「魔眼(まなこ)」があるから、かなり及ばないが代用は可能。
…当たり前だがスリーサイズをミリ単位はおろか、仮にメートル単位だろうが見ることはできないぞ。
出来るとしたら肌着の色を見ること位。それでもやるつもりはない。
ちなみに何故見れるのか。
服の下の武装を確認するためだ。あとは半径5m以内の魔力の流れ、風の動きなどを視覚的に捉えるためだ。
決して透視のためじゃない、決して。
「きーっ、で、でも形は私のが綺麗なはずだし、それにアンダーとの差は私のが上のはずよ!」
「ぐぬぬ」
「リアルにぐぬぬっていう人初めて見たわ」
この、どうしようもない名状しがたい不毛な争いに終止符を打ったのは、俺の腹の音のロングトーンにグルーヴを刻むが如く軽快かつリズミカルなドアのノック音だった。
俺は思わず、魔眼を発動してドアの外の来訪者を確認する。
ドアの取っ手部分あたりに腰があることから、身長はあまり高くない。
やや丸みのあるシルエット、女性の肌着らしきものが映っていて、武装はしていない。更に魔力反応もないことから、敵意はないはず。
ふぅ、と安心しつつドアに近づきつつ「はーい」と気の抜けた声で応答する。
「寮長だ。」
「知ってたわ。はいはーい」
ドアをゆっくり開けると外にいたのは仁王立ちしている寮長だ。先刻承知の通り、開ける前からわかってましたとも、ハイ。
「先ほど言い忘れたことがある。荷ほどきの最中悪いがあがらせていただきたく」
「あ、いいですよ。
散らかってすらいませんが、どうぞ」
寮長さんに入室を促すと、「よしなに」と一言断りながら部屋に入る。
この世界の建物ないし寮の部屋に玄関はなく、土足で上がるのが通例となっている。
無論だが泥落としマットなどないので、雨の日の来客はなるべく避けたいと感じる俺は食べそびれたスイートポテトを食べるべく寮長の後をついていくのだった。
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