5 ダメだ、こりゃテンプレ

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「待てよ。妾がまだ若かった頃、マーリンという名前の大魔導師の話を聞いたことがあるな。 よもや?」 「いつの話だよ寮長」 ミカサさんのスイートポテトの追加が運ばれ、ほのかな甘みを感じる空気と緑茶の強めの香りが混じり合い、夕方近い時刻とは思えないほどのおやつタイムでの話題はマーリンの正体について。 寮長いわく、大魔導師らしい。 当たり前田のクラッカー…当たり前だが、マーリンはヴァンパイアであり、大魔導師はおろか一介の学生にすら劣る魔力量しかないヴァンパイアが大魔導師と呼ばれるのはおよそ検討がつかない。 変異で魔力量がかなりあったとしても、せいぜい校内最強から少し劣る程度。 だが大魔導師がどの程度の大魔導師であるかは分からないが、字面から見て取れる二次元的で一般的な洞察力があるであろう寮長にすら大魔導師と言わしめるのだから、実力は高いのだろう。 …確かにわざと魔力残渣を残したり残さなかったりしてたからな。 それを目の当たりにした先入観を踏まえると、魔法をバカスカぶち当てるようなものではなく恐らくはその精度、質が最高峰であるから呼ばれているのだろう。 高い質と精度があれば初級魔法で防御魔法壁の重層すら破壊出来るだろうしな。昔見たよ、少ない魔力で一点突破しようとしたイケメンキャラの話。 「妾はこう見えて齢400はゆうに超えておるからな。」 「なにそのマーリンの肩書きすら霞む身辺情報」 「知らんのか?ドワーフとエルフのハーフ、人間とリザードマンのハーフを親に持つ妾の肉体年齢は18で固定されているのだ。 それゆえ年齢や誕生日など、瑣末な問題じゃ。 問題なのは他であろう? よもや同年代のヴァンパイアとハイエルフと相見えるとは思わなんだ。 その知り合いに、あの大魔導師マーリンがいて、更に妾はその大魔導師マーリンと同居しておる。 こう見えて、かなりワクワクしておるのじゃ」 「…んー、どう見ても」 無表情。と言おうとした瞬間に、一般の人間ですらおかしいと感じる量の魔力を感じ取った。ガレさんとミカサさんが南に面した窓から外を眺める。 「…この気配」 「うん。今朝のドラゴンの、よね」 朝のあのドラゴン生きてたんだ…。いやぁ、勇者がポンコツで助かった。 だがそのデカ過ぎる気配へと向かう、濃ゆ過ぎる魔力の塊を感じ取った俺達は一斉に顔をしかめた。
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