5 ダメだ、こりゃテンプレ

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気がつけば、原っぱ。 ガレさんが転移させたんだとわかったのはそれから2~3秒後。ふぅ、と言うガレさんのため息を聴いたからだ。 彼女は俺たちを、先ほど魔力を感じ取った場所へと連れてきたようだ。魔力がそこかしこに散らばっているのを感じつつ、ミカサさんと俺、ガレさんは型にはまらないような戦闘態勢をとる。 寮長は見た目通り、一本の剣を両手で自らの前で杖をつくように構えている…のかボーッとしてるのかは定かではないが、相変わらずの無表情。 4人でそれぞれ四方に向き、死角を減らしつつそれぞれが固有の力で魔力の塊を探す。 ガレさんがやはり、いち早くその位置を察知すると羽ペンを取り出し、虚空に何かを描く。…あの文字、確か 「漢字か」 「やはり分かりますか、カズマさんには。 この羽ペンで描いたものを具現化させるのが私の力なのです。…と言うよりも、なまじ魔力が多いだけで属性魔法が使えませんので、こうして火属性の魔法を使いたい場合はこの羽ペンで炎の絵を描き魔力を注いで、唱えるだけ」 そーれっ、と風船を飛ばすようなノリで羽ペンに描いた炎に魔力を与え、空へと火柱を立てる。 「千里眼、羽ペン、高すぎる魔力。 この三つを持った彼女こそ、ヴァンパイア一族で最高峰の魔法使い。 本名はガレット・ベルフェゴール」 今はセイズよね、と笑顔でミカサさんが言う。ヴァンパイア一族って俺の知り合いに限ってだが大魔導師だの最高峰の魔法使いだのと、強過ぎないですかね。 確か魔力が少ない、夜行性だが昼でも動ける、にんにくが効かない、エロい位の知識しかなかったからな。無論、この世界での話よ。エロいってなんだよマジで。 「平々凡々の私に出来ること…って言ってもなぁ。 百発百中の自信のあった弓も、カズマのせいで命中率下がっちゃったし」 「責任転嫁しつつ俺のメンタル削るとか高度過ぎだぜミカサさん」 あの真っ暗な森の中で俺を射止めるつもりで矢を放ったのに、すらすらっと俺が避けてしまったからか、自信をなくしている。 傷ついたレディを慰めるのは紳士の務め、ということで慰めようと声をかけるそぶりを見せた瞬間 「グギャァラァラァラ」 ガレさんが火柱を立てたその先で、もがき苦しむような振る舞いを見せる真っ黒なドラゴンが悲鳴か何かよくわからない声をあげつつ自由落下しているのが視界に入った。
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