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『よもや私と念を交わせる者がいるとは』
「その口ぶりだと、人間と言葉は交わせなかったからやられた。って言ってるのと一緒なのだがその認識でよろし?」
『あぁ。』
その巨大な口を開かずに喋るドラゴンに、未だ異世界ライフに慣れない俺は地球感覚が抜けないためか違和感を拭えない。
地球のアニメのドラゴンって大概、口パクパクしてるしさ。
『人間よ。主からは只ならぬ力を感じるのだが』
「安心しろ、お前を2000体くらいなら2秒で沈められる。ここでお前を殺してないということがどういうことか理解出来るな?」
ドラゴンは目を見開き、やがて優しい目つきにそれを変えるとゆっくりと頷いた。
理解あるドラゴンだ。おじさん好感持てるよ。
「お前達!そのドラゴンから離れろ!殺されるぞ!」
忘れてた、光魔法の時間差攻撃を繰り出してきた無鉄砲テクニシャンこと勇者ことバカ。
様相はこの世界の学生…しかも特待生にありがちな濃紺のローブを左肩にひっかけ、隠している左腕には魔法を待機させているらしい。ちなみに空気なガレさんとミカサさんと寮長こと白虎さんはカントリーなんとかみたいなお菓子を食べながら談笑している。優雅ね皆様。
『あいつだ』
ドラゴンや犬猫の表情の変化を見分けるスキルは持ち合わせていないが、ドラゴンがあからさまに嫌な表情をしていることがわかることから俺は奴が「例の要注意人物」であることを推測した。
「そこのお前、何者だ!何故その災厄のドラゴンと共にいる!」
そう叫びながら駆け寄る勇者(仮)
まだ名乗ってないから、(仮)とつけてはいるが十中八九間違いないだろう。
同年代にしてはやや老けた顔立ち。決してハンサムだとかイケメンだとかとは程遠いが、悪くはない。
「名前を聞くなら先に名乗れ。
名乗らないやつに、俺がこのトカゲ野郎と一緒にいる理由を語るに値しない。
人間としての常識をポケットに入れてから出直せタコ」
「な、な…俺は勇者だぞ!」
「では勇者君、俺から一つ質問させていただきたい。」
某警視庁の掃き溜め部署のイギリス紳士みたいな人のように人差し指をピンと立て、聞いてみることにした。
勇者(仮)はいきなり質問をされたからなのか、はたまたただのコミュ障なのかは定かではないが、いささかの狼狽を見せた。
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