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さりげなく恥ずかしいことを口走ったが、ここで慌ててしまっては本末顛倒なので敢えて冷静を装っていたのだが、どうやらガレさんの方がヒートアップしているらしい。主に対して何を考えてやがる、何を。
「あわわわ、か、カズマさんがいきなり爆弾発言するからちょっと焦りましたよ」
ふーっ、とアヒル口をしながら両手でパタパタと扇ぐ姿に見惚れそうになった。かわいい。
話を戻すが、確かに働く必要があるな。
だがギルド登録をしたところで「強い!帝になってくれ!」みたいなお約束展開にはなりたくないので、ギルドはパス。
だがそれ以外の仕事があまりないのも確か。魔法に関しては闇魔法を嗜む程度しかやっていないので図書館や魔法学の研究の仕事も無理。
武術の心得もないので指導員も無理。
そうなると露天商などがあるが、あのテの商いは貴族に気に入られないと店を継続出来ないのでパス。
やはり裏稼業をする以外方法はなさそうだ。表向きの仕事も考えなければならないが、まずは働き口を探してから。
「裏稼業と言っても、何をする?」
「いいですか、カズマさん」
ガレさんに話を振ると、いつの間にかホワイトボードのようなものを取り出し、赤い小さなコーンのついた棒を右手にしてモノクルをクイと上げている。やはりかわいい。
「鼠小僧、怪盗キ●ド、ルパ●三世、神風怪●ジャンヌなど、裏稼業においては著名な方々がたくさんいらっしゃいますね。」
「鼠小僧以外が架空のキャラなんですがそれは」
「ですがありふれた盗みなんかをやったとしても、非常につまらないです。
確かに人間界に何かしらの悔恨として傷をつけるのはアリかもしれませんが、カズマさんは泥棒には向いてません。
人間でありながら人間に対し嫌悪感を抱き、それでもなお人間として生き続けるその図太いメンタルは評価出来ますが」
ガレさんはここまでの説明を、せっかく出したホワイトボードを使わずにつらつらと述べるだけだが、一呼吸おいて
「カズマさん、若干ドンくさいので」
と呆れながら、やれやれとジェスチャーをする。
あー、確かにね。ペットボトルのフタ開けるのにちょっと失敗したりするもん。そら無理だわ、怪盗なんとか系は。
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