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なんの用だ藪から角パイプに、と謎の脚色フレーズが脳を過ぎったところでマーリンが本題に入る。念話は無線と違い、ある程度は感情を乗せたり引いたりしてもしっかり繋がる。仕組みは分からないけどね。
「(あのね、例の勇者なんだけども)」
勇者の件についてはヴァンパイアメイド5人衆は当たり前だが周知済み。他にいるメイドさん達は達者でやってるだろうか。
っていうか俺、大魔導師すら脚の力だけで殺したんだよな…。パネぇ、ビギナーズラック。あの時の脚の運勢は花丸だったんだなぁ。
「(あなた方がふざけて倒して、あのまま放置してたから、魔獣に踏み潰されたらしく今治療中よ。)」
「ほほう。あ、ガレさんダージリンおかわり。」
「なんかメイドらしい仕事を久々にやった気分です。かしこまり★」
「かわいい」
「(イチャつくなバカ人間。
ひとまず、この国の勇者の無力化には成功したわね)」
含みのある言い方だな、と首を傾げつつガレさんの淹れたダージリンを一口含む。熱いけどうまい。淹れ方ひとつで香りの立ち方やまろみが全然違う。最高だ。
俺はすぐにマーリンに続けろ、と念話を送るが少し間をおいて返事が戻ってきた。
「(最初にアザゼルのアホやハデスのジジイから聞いてるはずよ。
教会などが、こぞって勇者召喚をしてると。勇者は1人じゃない。
ましてや男ではない可能性もあるの。
今回無力化した勇者はあくまでもダミーや影武者の域を超えない。
見たはずよ、勇者にしては練度の低すぎる魔力を。)」
あぁ、確かにと口に出しながら念話するとガレさんが可愛らしい花柄のミトンをつけながら鉄板に乗せられたピンサ(ピッツァの元になった食べ物と言われている昨今注目されている、ヘルシーなピッツァ)を持ってきている。上に乗っているのは…はちみつレモンにマーマレード、そしてシナモンが一振りか。…なんだろ、五感の冴えが日に日に上がってる。ピザ生地が米粉だというのにも気付いてしまった。
「ピンサ出来ました、お熱いうちに」
「ありがとガレさん。はむっはむっ。…ふほっほっ、うまっ、ほっ、ほっ」
「(あーもう!念話で飯テロすんなァァァァッ!)」
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