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飯テロ念話から一晩明け。
学園生活初日、なんとなくイヤな予感しかしない朝からのこの胸騒ぎをどうにかこうにか持ち前のドン臭さで乗り切りつつ歩を進める。
ガレさんは一応付き人なので不本意ではあるがカバンを持ってくれている。
あぁあれで制服だったらなぁと呟き、てちてちぽちぽち歩く。
アスファルト程ではないが丁寧に舗装されている石畳の道はさしあたり片道2車線くらいの幅で、当たり前だが歩道と区切られてはいない。電話はあるのに、いやはや中途半端な文明の進歩だ。
そしてその石畳の道の脇に桜の一本でも生えていれば新入学気分を味わえるというのに、あるのはよくわからない木々。
知らない木々であることは間違いはない。
普通、木は葉が緑で木の幹が茶色か白などだが
「ほぼ黒の幹と茶色の葉は初めてだ」
「あら、意外ですね。」
ガレさんがさもこちらが知っていたかのような素振りだが、学園に通う道であることから俺が転生者であることを周知されないための気遣いなのだろう、ありがとう。
「この地方では割とポピュラーですよ。
まぁ確かに、私たちは田舎の出ですからね…」
そういやエルフの村の出ということになっていたんだった。
「昨日来たばっかりだしな、これから慣れていこう」
「はい!」
普段やや猫撫で声のガレさんが割と強めの声で軽く肩を震わせつつ返事する。かわいい。
「おい、あっちで喧嘩やってんぞ!」
どこからともなくそんな声がする。わざわざこの学園に通じる、そこそこ長い道を戻って来たのだろうか声の主らしき人間は肩で息をしている。
正直、どうでもよい。
勇者()あたりが薄っぺらい正義感を張り付けて、中流貴族あたりに説教でもしてるのだろうと決めつけ、その声の主らしき人間の真横をスルーしつつ
「興味ないね」
と、どこぞのファンタジーなゲームの主要キャラみたいなことを捨て台詞として落としておいた。
ガシッ
不意に肩を掴まれた。
「なんか用か、伝言板」
「普通よ、喧嘩は止めるだろ?」
「お前が止めればいいじゃん。多数の人間行き交う道を引き返すメンタルと体力があれば余裕だろ」
どこの馬の骨とも知らない人間とじゃれあう余裕はないので、肩におかれた手をやや乱雑に振り解き、今度こそ無視してやった。
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