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「特待生一年の諸君っっっ!!」
破裂音にも似たその声は一瞬、俺のチキンハートを鷲掴みにし、即リリースしたかのように俺やクラスの連中の視線を一気に集めることに成功したのか、更に勢いを増し
「入っっっ学っっ!おめでトゥゥゥーー!」
大げさなラジオ体操が如く、翌日筋肉痛必至レベルのジェスチャーを従え、やがて
「私はこの学園の教師であり、君たち未来ある特待生一年の担任となった!!」
さながら古代ローマのすっぽんぽんの男の彫刻のようなポーズを取り、黄昏る。
「名をマルク・ヘイルと申す!性別はこう見えて男っっ!
以後っ!おー見知りおきをっっ!
さーっ速だが、地下体育館へと向かう!!
限りある若者諸君の時間を無駄にしない為っっっ!転移しちゃうよっっ!」
中世…、中性的な容姿のマルク先生は突拍子もなく…いや突拍子はあったが、割ととんでもないことを口走る。
いくら人数が少ないと言えど、生徒に加えガレさんを始めとした付き人合わせて20人を超える人間を一瞬で転移魔法によって移動させるのだ。その力量たるや、恐らくこの学園で最高クラスであろう。
「行くぜ、転移っっ!」
視界が一瞬で、本当に一瞬で、瞬きすら置いていくようなスピードで変化した。
体育館らしき場所に移動したようだ。
それまでマルク先生の迫力に押されていた生徒達は一同に驚き、中には焦って騒ぎ出す者も現れた。いや特待生なんだから転移くらい出来るだろ、ミーハーぶるなタコめ。
「さぁ特待生一年諸君!ここに並びたまえ!
あっ、付き人の皆様は生徒さんの隣に待機していてくださいね」
付き人と生徒への態度の温度差が違うここの学園長とは相反し、付き人に対しては平身低頭なマルク先生に共感を得た。
まだまだ、人間も捨てたもんじゃないな。
「マルク先生、意外といい人ですね」
「わかる」
「ここに来るまで、ロクな人間いませんでしたし」
付き人もといメイドに対しての高圧的態度の学園長、メイドを奴隷呼ばわりした某ホテルの支配人とその悪い仲間。
確かにロクな人間いなかったな。
「あ、でも寮長さんは別です」
「あの人が人間なのか、一度MRIを撮ってみたいもんだ」
四君子を遊び半分で始末するんだぞ、人間なワケないだろ、きっと。
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