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「これより、ヘヴェレスト魔法学園入学式を執り行います。
まずは特待生四年、現役勇者であり生徒会長であるトーリ・クラウンライト二ングさんによる挨拶です。」
機械的に、抑揚のほとんど見られないアナウンス。声からして女性のようだが、こうも音声合成ソフトのキャラのすっぴん調声が如し抑揚のなさは逆にすっぴん調声も舌を巻くレベルだ。
アナウンスの内容はほぼ頭に入ってはいなかったが、勇者の名前がやたら長いことだけはよくわかった。眠たい。
あくびをしていると、体育館のステージに立ったトーリ先輩が巻物のような筒を持ちながら拡声魔法を発動させる。
なるほど、マイク代わりか。半導体すら出来ていない時代だし、そもそも魔法が発展している時点でいちいち驚く必要もないか。俺は再びあくびをする為に口をむずむずと動かすことに集中した。
「紹介にあった通り、私の名前はトーリ・クラウンライト二ング。勇者ではあるが、私は女だ。よく見間違いをされるのだが、間違えないでいただきたい。
さて新入生諸君。この学園の特待生となったからには、それ相応の覚悟が必要となる。魔法にしろ武術にしろ勉学にしろ、常に前を向き精進して欲しい。
間違えたり落ち込んで、くよくよする位ならそのくよくよしているエネルギーを歩き出す力に変えてしまえ。
君たちは今、スタートラインに立っている。終わりの見えない人生で、どれだけのスタートラインを踏むかは分からないが、間違いなく言えることは一つ。
学問、魔法、武術において終わりもなければ始まりもない。
たとえ今は三級規制魔法しか使えなくとも、仮に一級規制魔法が使えても、そこをゴールと考えるな!
そこから更に加減を見極め、更には秘匿性能を上げたり、課題は山のようにあるはずだ。
満足してくたばるか、満足せず道を歩むか。君たち一人一人にかかっている。
長くなったが、最後に一言。
我々は、正義の名の下にある!」
その言葉の後、割れんばかりの拍手が体育館を埋め尽くす。
付き人の皆さんも涙を流しながら拍手をしている。…なんか、どこかの国の政見放送を見ているみたいだな、と我が付き人ガレさんに視線を移すとガレさんも一筋の涙を浮かべている。
「(中身が薄すぎて、あくびが出ました)」
「(なるほど理解したわ)」
平常運転で、何よりです。
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