547人が本棚に入れています
本棚に追加
恙無く入学式も酣となり、さぁやれやれ教室に戻りますかと周囲が思い思いに漫ろ歩き始めた頃、壇上に上がった一人の男。
…あれ、今朝絡んできた伝言板じゃねぇか。
「俺の名前はハウル・ヴァンデ、一般科一年だ。今日昼休みに特待生一年の破壊者と決闘を行う。興味のある奴は来い!俺が破壊者を倒す!」
周囲の人々は漫ろ歩きしていた足を止め、壇上にいる伝言板野郎を注視してはいるが、さも興味がないといったジェスチャーで踵を返してゆく。これに激怒した伝言板野郎はフンと鼻息荒くその場を後にした。
俺もそれに倣うまでもなく、教室へと向かった。…ここ地下だけどどうやって帰るのかなと思った頃には先生の転移魔法陣によって特待生一年の教室に視界が変わっていた。心臓に悪いって、いきなりはサ。
てゆーか、俺の通り名は破壊者で確定なのね。不名誉。
昼休みはそれとなく、どことなくヌルっとした風を従えてやってきた。
ガレさん特製のサンドイッチをもっさもっさと頬張りつつ、決闘をすべく教室を後にする。ちなみにアボカドとマグロのマヨサンド。超美味いぞ。
なお教室の連中は見にこないらしいので逆に好都合である。同じクラスに勇者がいる可能性もある為、手の内をバラさずに済むのだ。
「逃げなかったところは褒めてやろう」
「そ、それは俺のセリフだ!破壊者風情が!」
テンプレを打ち砕くべく、到着した瞬間に決闘開始前のお決まりの挨拶をしてやった。
「おまえが負けたら、俺のしもべとなるのだ!いいな、破壊者!」
「私、敗北しないので」
どこぞのXな医者の物真似をしながら、ズボンのポケットに手を突っ込む。
…そういやこいつ、私服だな。確かに今日は私服登校可だったのはいいが、どこの名探偵強くてニューコンティニュー君だよと言いたくなるような蝶ネクタイに金銀のスーツ。パーティーグッズかよこいつ。鼻眼鏡つけてやりたい、すっごく。
「破壊者、お前も望みを言うがいい。どうせ叶わぬ望みだが」
「命」
「…は?」
「俺が勝ったら、おまえの命をもらう。異論はないな?」
この言葉に、伝言板もといハウルは冷や汗を一筋流す。
決闘とはそもそも、互いに命を賭けて戦うものだ。それを金やら女やらと景品を変えて言った昨今のヌルゲーに興じるつもりはない。その覚悟もない癖に、バカな奴だ。
最初のコメントを投稿しよう!