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なにをバカなことを、小さくハウルは呟きながら武器を取り出す。そこそこ隆々な肉体でありながら、彼の武器は指揮棒(タクト)のようだ。有名な魔法小説に出てきそうな40cm程の小枝のような杖ではなく、うずらの卵ほどの大きさのコルクのグリップから細い角のような部分が生えている。小指、薬指、中指でコルクを握り、親指と人差し指は輪を作るような形でフリーの状態となっている。
魔法および魔力操作系の媒介具と見たが、その体つきならガントレットでも使えよと俺は目を瞑る。
「お前、俺が命を賭けろといっても続けるつもりなのか?いいのか?」
この言葉にハウルは、いささか怒り肩気味だった姿勢を柔らかくしながら体格に似合わない小さく蚊の鳴くような声で
「俺が勝つから関係ない!」
「おほー、威勢だけは後世に伝えられるレベルだな。」
「決闘に命を賭けると言った破壊者、貴様の考えも正す!」
「さすがにアホだなお前。
そもそも決闘ってものはな…」
「御託はいい!始めるぞ!」
ハウルはそれまでのか細い声ではなく、カーテンを開けて部屋に注ぎ込む日差しのように明朗快活な声色をもって試合開始を宣言する。
その瞬間にハウルは自分の前方に巨大な六芒星を展開、その点には小さな魔法陣。更にそれらを大きく囲う魔法陣。
「俺のこのタクトは魔法を重ねられる。
高威力の魔法を魔力消費を抑えて…」
「『ディスペル・ウィンド』」
御丁寧な説明をしている間、錬成にやや時間のかかる魔法の発現が容易に出来た。
自然現象にアンチマジックを合わせた汎用魔法の中では高レベルに値するディスペル・ウィンド。その言葉通り、魔法の発現と発動を消滅させる魔法。
「貴様…!味な真似を!」
「いやいや戦いの最中なんだから集中しろよ。敵に自分の手札バラしながら戦うのはさすがにバカだ、愚の骨頂だ。」
ここぞとばかりにハウルに浴びせる煽り文句。反省も後悔もない。
「てことで、さようなら
『ボア・インパクト』」
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