547人が本棚に入れています
本棚に追加
「破壊者ァァァァッ!」
さながらソニックブーム。耳を劈き、空気すら震わせるような声量で俺の字名を叫ぶ者…。
「(例の、長い名前の勇者のようです)」
いつの間にか観客席に移動し、煎餅をパリパリとむさぼりつつどこから出したか分からない湯呑みを持ちながら和風ティータイムを洒落込むガレさんから念話が入る。…あら、ミカサさんとマーリンさんと寮長までもが混ざって賑やかそうでなりよりです。
「(多分この後、勇者に難癖つけられるフラグがビンビンですのでご注意ください。
なんなら、使い魔召喚してもいいかもですね)」
「(カズマ様ー、勝ったらお姉さんがいいことしてあげる)」
ガレさんには軽く見捨てられ、マーリンさんからは謎の誘惑をされ、いたたまれなくなってきたあたりで声の主が登場した。
「破壊者ッ!!貴様、人の血は流れていないのかッ!!何故あぁもアッサリと同級生を殺せる!!」
ガレさんを始め、俺が身内認定した女性達が軒並みグラマラスなせいか、同年代ではそれ相応に豊満であろう勇者の容姿が貧相に見えてしまう。白のワイシャツに赤のカーディガンを羽織り、下は紺色のパンツを履いている。動きやすそうな格好ですね、と適当に心のうちで褒めていると、明らかな闘志と殺意の篭った視線を勇者が放つ。
「無言を貫くか…。仕方あるまい、貴様は私が倒す!同胞を殺され、みすみす黙っていられるわけないからな!」
「決闘を申し込む、ということでいいのか?そしてそれが何を意味するのか、その末路がどういうことか。
生半可に啖呵切って後で泣き言言っても知らんぞ。」
やはり先ほどの試合を見ていたからなのか、あれだけ威勢の良かった勇者は尻すぼみし、声を紡ごうにも体が震え始める。
「わ、私をどうするつもりだ!」
「念のため聞いておくが、勘違いしてないよな?
一応言っておくが、俺を殺したところでさっきの伝言板野郎は蘇らないからな。奇跡の力とかを信じてるようなら、それはまず間違いなく起きない。
それと、女だろうが勇者だろうが負けたら殺す。覚えときな。
決闘の申し込みなら日を改めろ。
覚悟も度胸も中途半端な勇者、殺して嬲ったってつまらん。」
じゃあな、と後ろ手に手をひらひらさせながら踵を返し、闘技場を今度こそ後にした。
最初のコメントを投稿しよう!