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中身は分かってた。
日本の食卓に欠かせないものばかりだ。
結局あの風呂敷包み二つを持っていくハメとなり、ようやく帰宅した頃にはまだ肌寒いと言うのに汗だくだ。
一風呂浴びようと思い立つのだが、空腹の鐘が腹から鳴り響いた為、さきに夕食となった。
ごはん、納豆の小鉢、様々な調味料、卵焼き、春菊の胡麻和え、きゅうりとタコのような生き物の酢味噌和え。そしてかぶのお吸い物。
うん、とても20代の食卓とは思えないほどのジジ臭さが漂う。
そんなジジ臭さを感じる片隅で、ガレさんは目をキラキラさせている。
「この浅黒く輝く小粒の豆は、私が一番愛して止まない納豆様ではありませんか!
んあぁ!千葉県産ねぎに千葉県産の春菊!そして福島県産のきゅうり!このごはんは北海道が生んだ銘品、ふっくりんこ!
むっはぁ!なんと私は幸せなのでしょうか!おまけにお仕えしているカズマさんの手料理!はー、生きててよかった!」
「手料理にカウントして良いのやら…。ま、まぁ食べて食べて」
「いやいや、カズマさんから」
「レディファースト精神ですので」
「じゃあ、一緒にいきましょう」
多分、俺とガレさんの日常はこんな感じなのだろう。異世界生活してるってのに、どうも日本にいた頃と大差ない気がするんだ。だいたいハデスのせいだが。
いただきます、と食前の挨拶を交わしお吸い物に箸をつける。うむ、美味い。
そこからごはん、おかず、御御御付けと綺麗な三角食べをしてフィニッシュ。
食べてて気付いたこと、と言うか疑問に思っていたこと。
「ガレさん、見ただけで産地やら品種やらがわかるの、なんでなん?」
「せ、千里眼ですよ…」
「またミカサさんとかマーリンに能力の無駄遣いって言われるな」
「お茶碗洗ってきますね」
「さらっと逃避しよったよこの子」
お茶碗洗いに逃げたガレさんの表情はキラキラツヤツヤしていて、少しの間そのツヤツヤキラキラしたガレさんを眺めてしまった。
なんかこう、ガレさんを見てるとさ。
胸が苦しくなるような、切なくなるような。でもそれでいて暖かい気持ちになるんだ。
なんだろね、この感覚。
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