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「ほうっちっ!いてて…あの野郎」
扉の向こうに投げ出され、久々に吸う魔界の空気。全体的に薄暗さはあるが、ただ単に曇り空が多い地域と割り切れば自然は豊かだから空気は曇り空も相まってひんやりと心地が良い。なんとなく、ムショ暮らしをしていた人が外に出て「シャバの空気がうまい」と言う理由が今、わかった気がする。
しかし、投げ出された先がハデスの城の庭先とは驚いた。芝生がなければ間違いなく膝をすりむいていただろう、とくだらない冗談を考えつつ立ち上がり、うんと伸びをする。城の使用人達がチラホラとこちらに駆け寄る姿が見える。…あれ、こないだ真っ二つにしたヴァンパイアさん達じゃん。謝った方がいいのか…
「カズマ様!先日は大っ変失礼しましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
使用人が5人ほど、弾丸のごとしスピードで飛びかかってくる。しかし着地点は俺のほぼ足元。それも、綺麗な土下座ポーズで。なにこの状況。
「まさかあなたがハデス様の召喚した「魔界の覇王」とはつゆ知らず、矛先を向けてしまい申し訳ございませんでしたぁぁ!我々、カズマ様の命とあらばこの命を差し出しても構いません!」
「いやアンタら不死身でしょ」
「ノォォォォォォォォン!忘れてたぁぁぁぁぁぁ!あぁ、カズマ様は我々の素性を知りながらあのように振る舞われ「反省しろ」と暗に示していておられたのですね!なんと聡明で博学なのでしょうか!」
「んなことより、色々聞いていいか?」
使用人…ヴァンパイアメイド達は叫びまくるから本当ならうっとおしいのだが俺に殺気をあてたことを深く反省して狂乱したハデスよりはまともなのでひとまず頼んでいた案件の回収をと、話を振る。
「はい、それに関してはワタクシが。」
ひとりのメイド…確かガレさんがカーテシーをしながら一歩前へ出る。
「まずカズマ様の言いつけにより頼まれておりました武装魔石を四つ手配しました。このビニール袋に入ってます。
それと、学園入学の件は明後日の朝10時学園集合であとの指示は教員を頼ってください。
もうひとつですが、私が同行させていただきます。
ハデス様からお暇をいただきましたので問題はありません。以上でございます」
武装魔石をビニール袋に入れるセンス、悪くないぞガレさん。
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