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心変わり
昔から、一人の時でも必ず『連れがいる』と認識されていた。
飲食店の席に着けばお冷を二つ出されるし、映画に行けば二人分ですねと言われる。
そのたび一人だと主張すると、すぐに相手は側に誰もいないことに気づいてくれるのだが、それまでは必ず、同行者がいる扱いを受けていた。
友達に話しても、幽霊に憑りつかれてるんじゃないかと茶化され続けてきたが、多分本当に、俺には何かが憑りついているんだろう。だから周りの反応がああなのだ。
でも不思議なことに、大学に入学した途端、誰かを同伴していると思われることがピタリとなくなった。
大学は地元なので実家から通っているため、生活環境に大きな変化はない。それでも確かに、二人連れだと思われることはなくなった。
ありがたいが、どうしてだろうと謎に思っていたある日、友達になった同じサークルの奴が、最近、どこに行っても二人連れ扱いされると言い出した。
今までの俺と完全に同じ状態だ。ということは、俺に憑りついていた何かは、そいつに憑りついたということだろうか。
これまで多くの人間と出会ってきたのに、ここにきてどうして…と思ったが、友達を見ていたらなんとなく理由が判った。
友達の身長は百八十ちょっと。スポーツマンタイプの爽やかなイケメンで、性格もよく、ともかくもてまくりだ。
こいつは間違いなく、俺が知りあった中で一番のイケメンである。そいつが現れた途端、怪現象が俺から友達に移ったということは…。
何かに憑りつかれている状態なんて嫌だし、いちいち一人だと訂正しなてもよくなったから、絶対今の方が状況としてはいいに決まってる。決まってるんだけど、理由を考えるとかなり複雑な気持になる。
心変わり…完
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