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遅れて来た非を思い出し、黙って柴田について行く。見上げる広い背を見て思う。少し背が伸びたか。まだ伸びていることに驚くが、背の伸びに気付くほど会っていなかったことにも驚く。
「皆様、お待たせしました。大須オーガニックドールズの皆さんです!」
やかましいMCがスペシャルイベントの開始を告げた。「うおーっ」と空気のモヤをつくるファンたちの後ろに立つ。
ノリノリのカラオケ音楽が鳴り始めると、前に立つファンたちが手に持つあれこれを挙げて振り回すから、俺はその後ろでクイと首を伸ばした。
今日の衣装は、白地に水色ラインがお揃いのセーラーデザイン。それぞれにとびっきりの笑顔をつくるドールズたちが、ピョンピョンと元気に跳ねまわる。
センターの星山綾火がソロでキレッキレのダンスを披露する。あの超絶スタイルとパーツの揃った小顔はやはり目に付く。
「大須オーガニックドールズです! よろしくお願いしまーす!」
あれは、リーダーの伊東せな。うちの大学では有名人だ。アイドル活動をしている割には理学部での成績は良いとの評判だ。
柴田が今いる後ろの正面から、左の方に場所を移動し始めた。どんどん端の方へ行く。
「こんなに端っこで良いのか?」
「こっちの方が良く見える」
ステージから目を離さずに柴田が答えた。
「今日は皆さんに新期のドールズをご紹介します。今日のステージのために、夏休み返上で一生懸命に練習してきました。どうか可愛がってあげてください!」
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