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「あっ」私が声を上げた時にはオームリを咥えたペンギン二号さんが水面から勢いよく飛び出していた。
「うっうー」
魚を咥えた二号さんは嬉しそうに羽をばたつかせながら少し大きなオームリを丸呑みにした。
プルルルル。
電話も鳴り出した。
「はい、成瀬ですがどなたでしょうか」
「あ、オレオレ。母さんお金が――」
「私にガキはいない!」ぶつりと切る。こんな時に限って余計な電話もかかってくる。
二号さんがペトペトぺトと近寄ってくる。
「ん、どうしたの?」
「カメラ落とした」フリッパーをばたばたさせてあっけからかんとした調子でいうペンギン二号さん。
「今すぐ取ってきなさい!」
「りょりょー」
再び氷の穴に二号さんを送り出し、モニターに目を落とすと二号さんが水中で落としたカメラからの画像が映っていた。
最初、映った白い物が何か分からず、氷点下二十度の外気で凍ってしまった睫毛が目線に入り込んだのかと思ったが、違った。
薄暗い水面の下、遠ざかっていく水面の光とは別の、氷山の中に何か光るものがあるのだ。
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